マレーシアのE-Invoicing（電子インボイス） とERPについて

2025年7月からは、すべての企業に電子インボイスの義務化が迫っています。このブログでは、マレーシアにおける電子インボイスの詳細を掘り下げ、シームレスで効率的な財務プロセスを実現する完全統合ERPシステムの重要な役割を紹介します。

マレーシアの電子インボイス – 継続的取引管理（CTC）モデルとは？

マレーシアが電子インボイスを導入するにあたり、特に中堅企業は継続的取引管理（CTC）モデルによって促進される大幅な変化に備える必要があります。マレーシア政府が導入したこの枠組みは、請求書発行実務をDX化し、税務規制の遵守を強化することを目的としています。企業は、従来の紙ベースの請求書発行からデジタル・フォーマットに移行し、規制当局によって定義され承認された特定の標準化されたレイアウトで電子インボイスを作成、送信、保管することになります。

CTC モデルとは、企業が電子インボイスを扱うための共通かつ承認された方法を確実に使用できるようにするために、政府によって制定された一連のルールです。マレーシアの企業は、電子インボイス発行の準備を進めるために、CTCモデルを理解し、それに合わせることが、この変革期をうまく乗り切るために重要になります。

マレーシアでCTC電子インボイスモデルを使用する理由とそのビジネス上の利点とは？

1. 効率性と正確性の向上:

CTCモデルによる電子請求書は、請求書発行プロセスをデジタル化することにより、業務効率を大幅に向上させます。この自動化により、請求書発行サイクル全体が加速され、手作業に伴う遅延が最小限に抑えられ、正確で一貫性のあるデータが確保されるため、最終的に全体的な生産性が向上します。

2. 取引の透明性とトレーサビリティの強化：

CTCモデルは、請求書発行プロセスのすべてのステップをデジタル化し、記録します。請求書のステータスをリアルタイムで可視化することで、企業は請求書の作成から確認までのプロセスを追跡することができ、説明責任を促進し、誤解、紛争、支払遅延を最小限に抑えることができます。

3. 税務規制へのコンプライアンスへの対応強化：

CTCモデルは、電子請求書のフォーマットとプロセスを標準化することで、税務コンプライアンスを合理化します。このモデルの下では、関連する税務情報が自動的に組み込まれ、規制要件に準拠した請求書が作成されます。この対応により、時間を節約できるだけでなく、金融取引の一貫した正確な記録を維持し、規制当局の期待に沿うことにも貢献します。

マレーシアでの電子請求書発行の準

2025年7月までに、すべてのB2B（企業間）、B2G（企業対政府）、B2C（企業対消費者）取引において、電子請求書の発行が義務化される。導入は段階的に行われる。内国歳入庁（IRBM/LHDN）が発表した実施日は以下の通り：

2024年8月1日：年間売上高または収益が100M（1億）リンギットを超える企業

2025年1月1日：年間売上高または収益が25M（2,500万）リンギットを超え100M（1億）リンギットまでの企業

2025年7月1日：すべての企業

CTCモデルにおけるマレーシアの電子請求書発行準備のステップ：

1. 現在の請求書発行プロセスを評価する：

• 既存の手順を評価し、改善またはデジタル化を図る。
• 電子請求書をSAP ERPなどの現行の実務やシステムと整合させる。

2. CTCに準拠した電子請求ソリューションを選択する：

• マレーシアのCTC規制に準拠した認定ソリューションを選択する。
• SAPのような既存のERPシステムとのシームレスな統合を確保する。

3. 必要なインフラの変更を実施する：

• ITインフラをアップグレードし、安全な送信とデータ保存をサポートする。
• 増加する電子取引をシステムが効率的に処理できるようにする。

4. チームをトレーニングする：

•  新しい電子請求書システムに関する包括的なトレーニングを提供する。
• CTCモデルの要件とコンプライアンスについて従業員を教育する。

5. 規制の最新情報を常に入手する：

• 電子請求書に関する規制の変更を常に把握する。
• e-invoicingソリューションがCTCに準拠していることを確認する。

6. 電子請求書発行システムのテストと検証：

• コンプライアンスと機能性を確保するための徹底的なテストの実施。
• テストプロセスを通じて正確性と完全性を検証する

マレーシアにおける請求書発行方法 – MyInvoisPortal 対 API

マレーシアでは、企業はMyInvoisPortalとAPIのいずれかの方法で電子請求書を作成することができます。どちらを選択するかは、事業規模、IT担当者の有無、システム統合の好みなどによります。

API経由の電子請求書発行マレーシア方式 – SAP ERPとのシステム統合

包括的なソリューションを求める企業にとって、SAP ERP は政府公認の電子請求書 API とシームレスに接続します。この統合により、法規制の遵守、エラーの削減、透明性の向上が保証され、マレーシアの企業にとって戦略的な選択肢となります。SAP Document and Reporting Compliance (DRC), Cloud Edition は、シームレスな統合を実現し、規制基準の遵守を保証する上で極めて重要な役割を果たします。

SAP DRC, Cloud Edition

SAP Document and Reporting Compliance (DRC), Cloud Editionは、SAP Business Technology Platformで提供されるソリューションであり、ビジネスシステム（SAP ERPなど）と外部との間で電子文書やレポートの交換を容易にするように設計されています

このDRC Cloud Editionは、複数の国や地域にまたがるさまざまなビジネスシナリオにおいて、オンライン文書交換のための調和されたエクスペリエンスを提供することで、法的要件へのコンプライアンスを保証します。このプラットフォームは、複数のプロセスとのシームレスな統合を提供し、多様な地域要件に対応するための複雑さを軽減します。

主な機能には、電子文書（顧客請求書など）の交換、法定報告書の提出、Peppol ネットワーク内の外部当事者との文書交換の監視などがあります。このサービスを利用するには、SAP Business Technology Platform のエンタープライズグローバルアカウントを持っていることが前提条件となります。

SAP DRCによるドキュメントおよびレポート交換のためのガイド

Source: SAP

1. 文書/レポートの種類を特定する：

• 交換する文書や報告書の種類を決定する

2. 具体的なプロセスにつなげる：

• 特定された文書/レポートのタイプに基づいて、SAP DRC 内の対応するプロセスに接続する

3. システム統合のステップ:

• 選択したクラウド版のプロセス内でシステム統合のステップを実行する
• これらのステップでは、ビジネスシステム（SAP ERP）と SAP DRC をリンクする

4. 通信を設定する：

• SAP DRCと外部通信相手との通信設定
• 選択したプロセス固有の要件に基づいて設定を調整する。

5. Peppol ネットワーク・ドキュメント：

• Peppolネットワークと文書を交換する場合、Peppol Exchangeプロセスを利用する。
• Peppolネットワーク内で文書交換に関わる参加者を設定する。

6. その他の文書タイプ：

• Peppolネットワークを介さない文書については、それぞれの外部通信相手との通信を設定する。
• 選択した外部通信相手の要件に合わせて設定を変更する。

なぜマレーシアの電子請求書発行にERPが必要なのか？

電子請求書のダイナミックな領域では、特に中堅企業にとって、完全に統合された統合基幹業務システム（ERP）の導入が最適なソリューションとして浮上している。企業が単純な財務ソフトウェアから移行するにつれ、2024年にはその限界が明らかになり、ERPシステムの堅牢な機能が不可欠となっている。

1. シームレスな統合： ERPシステムは、電子請求書発行インフラとシームレスに統合され、効率的なデータ伝送と管理のための統一プラットフォームを提供する。
2. コンプライアンスと正確性： 中堅企業はマレーシアの電子請求書発行規制を遵守する必要があります。完全に統合されたERPシステムは、コンプライアンスを保証し、エラーを最小限に抑え、請求書発行プロセスの精度を高めます。
3. 自動化による効率化： ERPシステムにて、請求書発行手続きを自動化することで、手作業を大幅に削減し、業務効率を高めます。
4. 透明性の向上： 請求書発行のワークフローをリアルタイムで可視化することで、企業と顧客の双方にとって透明性が確保され、信頼が醸成され、誤解が減少します。

マレーシアの電子請求ワークフロー

電子請求書発行プロセスには、電子請求書の生成、発行、検証、保存が含まれ、金融エコシステムの合理化に貢献する：

1. 販売または取引が発生し、サプライヤーが電子請求書を作成する。
2. サプライヤーはMyInvoisポータルまたはAPIを通じて電子請求書を発行します。
3. 電子請求書はシステムを通過します。
4. 電子請求書は検証を受けます。
5. 有効性が確認された電子請求書は、IRBMのデータベースに保存されます。
6. 納税者は過去の電子請求書を閲覧することができます。

Source: Official Portal Inland Revenue Board Of Malaysia

簡易版電子請求書発行マレーシアのワークフロー：

IRBMによるマレーシア電子請求書ガイドライン

従来の請求書発行からデジタル請求書発行への移行を促進するため、マレーシア内国歳入庁（IRBM）は包括的なe-invoice guidelines (Publication Date : 9 Feb 2024)を発行しました。

これらのガイドラインは、固有の識別、製品およびサービスの詳細、課税の詳細、支払および財務分野、出荷および通関情報、用語の明確化などをカバーしています。

1. 一意の識別番号

IRBM 固有識別子番号

各電子請求書は、IRBMが提供する固有の識別子を持たなければならない。これにより、各取引文書の単一性と真正性が保証される。

2. 製品およびサービスの詳細

• 分類:

e-Invoice では、医療費、一般経費、慈善寄付など、すべての製品またはサービスを適切に分類することが義務付けられています。

• 製品またはサービスの説明:

明確であることが最も重要です。すべてのe-Invoiceは、問い合わせを受けた場合製品またはサービスの性質を明確に詳述する必要があります。

• 単価:

透明性を確保するため、e-インボイスには、提供される製品またはサービスの単価を明確に記載する必要があります。

3. 課税の詳細

• 税の種類と税率:

e-インボイスには、売上税、サービス税、その他の税金など、適用される税金の種類を明記する必要があります。さらに、対応する税率も記録されなければなりません。

• 税額:

規定された税率と請求額全体から導き出される正確な税額に関係します。

• 免税の詳細:

免税が適用される場合、e-invoiceは免税の詳細を列挙し、免税額を定量化する必要があります。

4. 支払いおよび財務関連

• 小計および合計：

e-invoice には、税引前小計と合計金額（税抜・税込）の両方を表示する必要があります。

• 数量および計量：

関連する場合、e-インボイスには製品またはサービスの数量と適切な寸法を記載する必要があります。

• 割引の詳細：

割引が適用される場合、e-invoiceには割引率とその絶対金額の両方を記載する必要があります。

• 支払い情報：

現金、小切手、電子マネーなど、選択した支払い方法を詳細に記載する必要があります。補足的な詳細には、サプライヤーの銀行口座、規定の支払条件、関連する参照番号などが含まれます。

5. 別紙の発送および通関に関する情報

• 発送受取人の詳細：

第三者受取人または代替住所が関与する取引については、氏名、住所、登録資格情報を含む包括的な詳細を組み込むことが必要となります。

• 税関および輸出入の詳細：

国際貿易に関連する E-インボイスには、税関申告書番号、関連製品の関税分類、関連する貿易協定の条項など、必要な詳細を記載することが必要となります。

6. 用語の明確化

統一性と理解度を確保するため、ガイドラインでは特定の用語も明確にしている。これにより、すべての関係者が、B2B、B2C、ERP、QR コードなど、電子請求プロセスに不可欠な用語を包括的に理解することができます。

これらのガイドラインにより、企業はIRBMが定める期待に沿って、電子請求書のエコシステムを巧みに操ることができるようになります。電子請求書のデジタル化は、より高速でスマートな携帯電話にアップグレードするようなものであり、マレーシアにとって大きな勝利となります。ビジネスを助け、環境を守り、生活をよりシンプルにすることが可能です。

最後に:

電子請求書への移行はマレーシアにとって戦略的な動きであり、企業に財務プロセスをアップグレードする機会を提供します。中堅企業にとって、完全に統合された ERP システムの導入は、電子請求書の複雑さを克服し、コンプライアンスを確保し、デジタル時代を先取りする上で極めて重要です。マレーシアの企業が電子請求書を導入することで、テクノロジー、コンプライアンス、効率性の相乗効果が最重要となり、シンプルで持続可能な新時代が到来します。