この記事では、SAPが提供するCRMであるSAP C/4HANAとは何か、その主要な機能は何か、そしてそれが企業にどのように役立つかについてご紹介します。
SAP C/4HANA とは?
SAP C/4HANAは、カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)の改善を目的としたカスタマーエクスペリエンス(CX)スイート、つまり顧客との関係性を管理するためのソリューションです。一般的に今日のCRMシステムは、販売に焦点を当てていますが、販売が終了しても、顧客との関係は終了するわけではありません。カスタマーエクスペリエンスの向上は、世界的にも経営の最優先事項となっており、この企業の考え方と戦略の変化に伴い、SAPのC/4HANAは設計されています。
SAP C/4HANAは、”レガシーのCRMソリューション(販売に焦点を当てている)”を近代化したため、「次世代CRM」と呼ばれます。SAP C/4HANAは、カスタマージャーニーのあらゆる段階で積極的なカスタマーエクスペリエンスを促し、すべてのチャネルにわたって一貫したエクスペリエンスとリアルタイムデータを提供します。
SAPカスタマーエクスペリエンススイートのC/4HANAには、すべてのフロントオフィス業務をカバーおよび最適化する5つの機能が含まれています。
- マーケティングクラウド
- セールスクラウド
- コマースクラウド
- サービスクラウド
- カスタマーデータクラウド
すべてのクラウドには、日々の運用に役立つ複数のツールとテクノロジーが反映されています。
C/4HANAを使うことで、企業は時間のかかる作業(意思決定のための情報収集を含む)を自動化し、労働生産性を高め、顧客をよりよく理解できるようになります。
各機能とケイパビリティ
1. SAP C/4HANA マーケティングクラウド
C/4HANAマーケティングクラウドは、従業員の生産性を向上させ、顧客についての理解を深めるのに役立つ機能・ツールを提供しています。
とはいえ、なぜ顧客を理解することがそれほど重要なのか、疑問に思われる方もいるかもしれません。
その理由は、顧客の行動や望みを理解することにより、有限である時間と資金をマーケティング活動の中でどこに重点的に投資するべきか、また、どんなチャネルを使えば最大限のROIを得られるのか、という意思決定をするのに役立つからです。
C/4HANAマーケティングクラウドを使用することで、任意のチャネルから顧客に関するデータを引き出し、このデータを統合ツールで視覚的に表示することができます。 このデータは、顧客を360度の視野で見ることができ、パーソナライズされたターゲティングを通じて顧客への最適なアプローチ方法を決定するのに役立ちます。 その後、電子メール、モバイル、ソーシャルメディアなどのさまざまなチャネルを通じて自動にキャンペーンを設定することができます。
マーケティングクラウドの主な機能は、次のとおりです:
- 動的な顧客プロファイリング
- ターゲットの絞り込み/オーディエンスセグメンテーション
- カスタムオムニチャネルの設計・実施・分析
- マーケティング計画
- データのビジュアル化・マネジメント向けレポート及び洞察の自動化
2. SAP C/4HANAセールスクラウド
C/4HANAセールスクラウドは、新規リードの特定、より多くの案件の成約、生産性の向上、営業プロセスの自動化に役立ちます。
さらに、C/4HANAセールスクラウドは、いつでもどのデバイスでもどこでもご利用いただけます。
もっと詳しく見てみましょう。
まず、SAP セールスクラウド内で、新しいリード(案件の機会)を管理することができます。リードスコアリングツールを使ってリードが商談に変換される可能性を可視化できます。また、商談スコアリングツールでは、販売の成立可能性を判断するために、商談をスコアリングすることができます。
営業担当者はこれらのスコアを使って、部門で取り組む商談に優先順位を付けることができます。
さらに、C/4HANA内の「インフルエンサーマップ」アプリケーションは、取引の成立を支援できる可能性が最も高い同僚を推奨してくれるため、取引の成立がはるかに簡単になります。 また、いつでも、どこでも、どのデバイスでもバックオフィスに簡単かつ迅速にアクセスできるため、どこからでも商談に必要な見積もりや請求処理なども指一本で対応でき、売上獲得に役立ちます。
SAP C/4HANA セールスクラウドの主な機能は、次のとおりです:
- リアルタイムでのリード管理
- 見積および契約
- 販売実績管理(SPM)
- 収益予測
3. SAPコマースクラウド
C/4HANA コマースクラウドは、すべてのチャネルにわたって、顧客への販売履歴、顧客サービスプロセス、コミュニケーションを管理するのに役立ちます。これにより、完璧な顧客エクスペリエンスを作成するのに役立ちます。オンラインでも店舗でも、顧客は常に便利に製品の購入、返品、または、受け取りができるようになります。
C/4HANAコマースクラウドは、すべてのチャネルを通じてコンテンツと製品の一貫したビューを顧客に提供し、クロスセリング製品の推奨、プロモーション、および検索の最適化を提案します。
さらに、C/4HANAコマースクラウドには、顧客にパーソナライズされたサービスを提供するのに役立つ機能が含まれています。 この機能を使うことで、店内/オンライン上の顧客の過去に収集されたデータに基づいて、最良の推奨/レコメンドを顧客に提供することができます。
以下のビデオでは、顧客管理機能を使って、店舗内でのサービスをどのようにパーソナライズできるかについて、紹介しています。(英語のみの動画となっていますが、是非ご確認ください)
C/4HANAコマースクラウドの主な機能は次のとおりです。
- オムニチャネル管理
- マーケティング機能
- 製品・コンテンツ管理
- 多言語カタログ作成機能
- 受注管理機能
4. SAP C/4HANAサービスクラウド
C/4HANAサービスクラウドは、顧客が期待するサービスを提供すると同時に、生産性を向上させるのに役立ちます。
サービスクラウドがどのようにして生産性を向上させることができるのかをご紹介します。
まず1つ目として、すべてのサービスクラウドツールとプラットフォームは、1つのインターフェイスに統合されているため、代理店が問題を解決したり、新しい注文を作成したりするために画面を切り替える必要がなくなりました。
2つ目として、C/4HANAサービスクラウドは、C/4HANAコマースクラウドと連携して、顧客の注文履歴の完全な概要をシステム上で確認することができます。これにより、顧客が必要とする製品やサービスを、他の部署に問い合わせなどをしなくても、提供することができるようになります。
3つ目として、C/4HANAサービスクラウドには、顧客とフィールドサービス技術者に適切な機能を提供するフィールドサービス管理ツールが含まれています。 フィールドサービス管理ツールを使用することでフィールドサービス技術者は問題をすばやく修正し、顧客に適切な情報を提供することができます。 スマートテクノロジーの実装により、サービス技術者は問題をより簡単に見つけることができます。 ツールのオン/オフライン機能により、技術者はインターネット接続を常には必要とせずに作業を完了することができます。
4つ目として、顧客がQRコードを携帯電話でスキャンするだけでセルフサービス機能を使用することができる機能を提供します。 メンテナンスのリクエストや、会話型AIチャットボットとの連携など、さまざまなオプションがあります。
5. SAP C/4HANAカスタマーデータクラウド
顧客データについては、企業によって困りごとが違います。例えば、一部の企業はデータを収集しますが、このデータを十分に活用できていません。 他の企業はデータの活用方法を知っていますが、ソーシャルメディアなどの単一のソースからのみデータを収集していることがあります。
では、顧客データの収集と活用に関する留意点は?
今日、顧客はパーソナライズされたマーケティングを求めています。 そのためには、企業は消費者の行動を理解する必要があります。 C/4HANA カスタマーデータクラウドを使用すると、顧客プロファイルを構築し、顧客が望むパーソナライズされたマーケティングを顧客に提供できるようになります。
しかし、顧客データの収集と使用は、企業の責任が伴う行動であり、顧客からの明示的な許可がない限り行うことができません。 それ以外にも、考慮しなければならない多くの規則や規制があり、おそらくさらに悪いことに、もしも間違った使い方をすると顧客の信頼を失うことになります。 そのため、C/4HANAカスタマーデータクラウドには、顧客へのデータ収集に関する透過性を提供する組み込みの権限管理ツールがあります。
企業は個人データの収集と使用に関するプライバシー規制に取り組む必要がありますが、SAP C/4HANAは、GDPRに完全に準拠した同意ベースの顧客データモデルを使用しています。
C/4HANA カスタマーデータクラウドのいくつかの機能は次のとおりです:
- GDPR、CCPA、LGPDの準拠
- ソーシャル・ログイン
- 顧客のプリファレンス管理
- ユーザーのエンゲージメントとロイヤルティ
SAP C/4HANA に関するよくある質問
1. SAP C/4HANAはブランド名を変えただけの製品ですか?
いいえ。これは(旧称)SAP Hybrisに加えて、最近の買収でSAPのソリューションとなった、CallidusCloud、Gigya、およびCoresystemsとが組み合わせられたソリューションです。 SAP C/4HANAは、SAP Cloud PlatformおよびSAP S/4HANAとの連携も視野に入れた、SAP CXを提供する製品ポートフォリオです。
2. SAP C/4HANA はSAP CRM の代替品ですか?
大部分はそうと言えます。SAP CRMは現在、少なくとも2025年まではサポートされることが保証されており、SAPはSAP CRMオンプレミスシステムのサポート終了日または交換を発表していません。ただし、SAPがオンプレミスからクラウド・ソリューションに移行することにより、おそらくSAPセールスまたはサービス・クラウドに対して新しい機能の開発が行われる可能性があります。
3. SAP C/4HANAは、Salesforceと競合できる製品なのでしょうか?
もちろんです。 すでに、上記で紹介した5つのクラウドソリューションは利用可能で、すでにコアビジネスプロセスに機械学習機能も組み込まれています。 追加の機能に関する包括的なロードマップもあります。 Salesforceの方がはるかに長い間サービスを提供してきましたが、SAP C/4HANA機能は同等で、一部の領域ではSalesforceよりも優れています。 これと、SAP ERPやS/4HANAとの統合能力が大幅に向上し、既にSAPのERPを導入している企業にとってはTCO(総保有コスト)が全体的に低くなるため、C/4HANAはCRM導入時の候補として非常に価値のある候補となります。
4. SAP C/4HANA にはSAP S/4HANA が必要ですか?
いいえ。S/4HANA だけでなくECC とも連携可能です。さらに、SAP ERPなしで個別(スタンドアロン)で導入することもできます。このソリューションは、ERPへの統合の有無に関わらず、導入が可能です。
5. SAP C/4HANAで提供する5つのクラウドソリューションすべてを使用する必要がありますか?
いいえ。単独で、あるいはどのような組み合わせでも利用可能です。
終わりに
C/4HANAソリューションは、顧客データを慎重に収集して処理するためのツールとインテリジェンスを企業に提供します。 同時に、従業員の生産性を向上させ、顧客体験を向上させるための複数のツールを提供します。
SAP C/4HANA では、すべての部門で独自に管理するデータクラウドまたはエクセルシートがある代わりに、SAP HANA データベース内のすべてのデータが集中化されます。
SAP C/4HANAは、エンドツーエンドのカスタマージャーニー全体をサポートします。 また、SAP Cloud Platformを使用すると、必要なすべてのアプリをパーソナライズ、拡張、作成できるため、すべてのカスタマーエクスペリエンスソリューションを革新、統合、拡張することが可能になります。