シンガポールのInvoiceNowとは?

InvoiceNowは、シンガポールにおける全国規模の電子請求書ネットワークであり、企業の財務取引を革新しています。この仕組みにより、業務の効率化、キャッシュフローの改善、コンプライアンスの簡素化が実現されます。SAP Business OneなどのERPシステムと統合することで、シームレスかつ自動化された財務プロセスが可能となります。


InvoiceNowとは?

InvoiceNowは、シンガポール政府の情報通信メディア開発庁(IMDA)が2019年に導入した全国的な電子請求書ネットワークで、請求書やクレジットノートを標準化されたデジタル形式で簡単に送受信できるよう設計されています。これは国際的に認められた「Peppol」標準に基づいています。

Peppol(Pan-European Public Procurement On-Line)の採用により、国境を越えた電子文書交換のための標準化された枠組みが提供され、相互運用性とセキュリティが確保されます。これにより、シンガポールは国内外でより効率的でつながりの強いビジネスエコシステムを構築しようとしています。

従来の紙や手動入力に依存する請求処理を減らすことで、企業は煩雑な作業や入力ミスを大幅に削減できます。


InvoiceNow導入のメリット

InvoiceNowへの移行は、中小企業(SMEs)から大企業まで、あらゆる規模の企業に大きな利点をもたらします。

1. 効率と正確性の向上

請求書を標準化されたデジタル形式に変換することで、手作業が減り、エラーや不一致も最小化されます。これにより、データ入力や突合せ、修正作業にかかる時間とコストを削減できます。

2. 迅速な支払いと信頼関係の強化

請求書が即時にデジタル処理されるため、支払いサイクルが大幅に短縮されます。これによりキャッシュフローが改善し、取引先との信頼関係も強化されます。仕入先にとっては流動性の向上、買い手にとっては事務処理負担の軽減というメリットがあります。

3. コンプライアンスと監査の効率化

InvoiceNowの標準化デジタル形式により、GST監査に必要なデータが一貫して記録され、税務当局が正確なデータに直接アクセスできるようになります。監査プロセスが短縮され、非遵守による罰則リスクも低減します。

4. データ伝送の信頼性

従来の郵送や手渡しに比べ、請求書やクレジットノートが安全かつ確実に取引先やIRAS(シンガポール内国歳入庁)へ届く仕組みが構築されています。


InvoiceNow導入ロードマップ(主要日程)

政府(IMDAとIRAS)は、GST登録企業に対しInvoiceNow導入を段階的に義務化します。

  • 2025年5月1日(ソフトローンチ):希望するGST登録企業は、InvoiceNow対応ソリューションを使ってIRASへ請求データを提出可能
  • 2025年11月1日:2025年5月1日以降に設立され、任意でGST登録を行う新規企業は、InvoiceNow対応ソリューションでのデータ提出が必須
  • 2026年4月1日:すべての新規任意GST登録企業が対象(設立日・法人形態に関わらず)

InvoiceNow導入手順(3ステップ)

  1. 対応ソリューションの確認
    使用している会計/財務ソフトがIMDAの認定済みか確認。
  2. InvoiceNow登録 & Peppol ID取得
    ソリューション/アクセスポイントプロバイダーを通じ、UEN(法人番号)を用いてSG Peppolディレクトリに登録。
  3. GST送信機能を有効化・テスト
    システム内でGST送信機能を有効化し、送信テストを実施。独自開発システムの場合はアクセスポイントとの接続が必要。

InvoiceNowの仕組み(5コーナーモデル)

従来の4コーナーモデル(売り手・買い手・両者のアクセスポイント)に加え、IRASを第5のコーナーとして統合し、GST申告が効率化されます。

  1. 売り手 → 供給データ送信
  2. 売り手側アクセスポイント → IRAS接続、データ送信
  3. 買い手側アクセスポイント → データ受信
  4. 買い手 → 購入データ受領
  5. IRAS → 請求書データを保存・利用

データフローの種類

  • 売掛(AR)
    • Flow A: Peppol経由送信
    • Flow B: 非Peppol送信(伝統的チャネル)
    • Flow C: POS端末・レジから集計
  • 買掛(AP)
    • Flow D: Peppol経由受信
    • Flow E: 非Peppol受信(紙やメールなど)
    • Flow F: 小口現金購入

最終的にすべてのデータはIRASに送信されます。


必須データ項目

InvoiceNow経由で送信される請求書/クレジットノートには、以下の情報が必須です:

  • 売り手情報: Endpoint ID、UEN、GST番号、住所、名称
  • 買い手情報: Endpoint ID、UEN、名称、住所
  • 請求書情報: UUID、請求番号、日付、通貨コード、金額(GST除外・含む)、GSTカテゴリー、品目情報など

(クレジットノートも同様に必須項目あり)


SAP Business One向けAxxis InvoiceNowアドオン

SAP B1ユーザー向けに、Axxis SAP B1 Singapore InvoiceNow Add-onが提供されており、SESAMiなどのAPIを介してIMDA認定アクセスポイントに接続可能です。

主なメリット

  1. 最新ガイドラインへの確実な対応(コンプライアンス確保)
  2. IRASに必要なデータ項目を完全網羅
  3. SAP B1から効率的にデータ抽出
  4. 単体/一括アップロード対応
  5. C5ネットワーク連携によりIRASへデータ送信可能

結論

InvoiceNowは、シンガポールのデジタルトランスフォーメーションを推進する基盤であり、財務業務の効率化、支払いの迅速化、コンプライアンス遵守を可能にします。SAP Business OneなどのERPとの統合により、さらなる最適化も実現します。

導入義務化の期限が近づく中、早めの対応が企業の効率性・正確性・機動性を高め、シンガポール全体の国際競争力強化にもつながります。